【防災格言④】「地震だ、津波だ、すぐ避難!」とは?津波から命を守る“迷わない行動”を考える

地震だ、津波だ、すぐ避難!とは?津波避難の意味と正しい行動を解説|防災ラボる 防災格言・災害の教訓
地震だ、津波だ、すぐ避難!とは?津波避難の意味と正しい行動を解説|防災ラボる

「地震だ、津波だ、すぐ避難!」

とても短く、分かりやすい言葉だ。

特に海の近くや津波浸水が想定される地域に住んでいる人なら、
覚えておきたい防災の言葉でもある。

しかし、この言葉を見ると一つ疑問が浮かぶ。

「地震が起きたら、どんな地震でもすぐ外へ飛び出すということ?」

答えは、そういう意味ではない。

地震の強い揺れの最中に慌てて外へ飛び出せば、
落下物などで負傷する危険がある。

まずは揺れから自分の身を守ることが基本だ。

気象庁も、頭を保護し、家具から離れ、
安全な空間や丈夫な机の下などで身を守るよう案内している。

では、

「すぐ避難!」

とは何を意味するのだろう。

今回は「地震だ、津波だ、すぐ避難!」という言葉から、
津波から命を守るための行動について考えてみたい。


「地震だ、津波だ、すぐ避難!」は実際に使われている防災標語

この言葉は、出典不明の昔のことわざというわけではない。

静岡県には1996年発行の
「地震だ、津波だ、すぐ避難!」
という津波避難対策パンフレットがあり、
現在の県の津波対策でも、

「地震だ、津波だ、すぐ避難! 少しでも早く、少しでも高く」

というスローガンが使われている。

さらに内閣府・消防庁・気象庁も2021年5月、
同じ「地震だ、津波だ、すぐ避難!」
というリーフレットを作成している。

つまりこれは、津波の危険がある地域で、

地震を感じたら津波を意識し、
避難が必要な状況なら行動を遅らせない

という考え方を端的に表した言葉だ。


「地震が来た瞬間に外へ走れ」という意味ではない

ここは非常に重要だ。

「すぐ避難」という言葉だけを見ると、

地震発生
↓
すぐ家から飛び出す
 ✕

と考えてしまうかもしれない。

しかし、大きく揺れている最中に移動するのは危険だ。

家具が倒れる。

照明や物が落ちてくる。

窓ガラスが割れる。

屋外でも瓦、看板、ガラスなどが落下する可能性がある。

だから地震発生時には、まず揺れから命を守る行動を取る。

気象庁も、揺れている最中は頭を守り、
安全な場所を確保することを基本としている。

そして海岸付近など津波の危険がある場所で、

強い揺れを感じた。

あるいは、

弱くても長くゆっくりした揺れを感じた。

そうした場合には、津波警報を待つことだけに頼らず、
速やかに高台など安全な場所へ避難する。

これが「すぐ避難」の重要な意味だ。


なぜ「情報を確認してから」では遅いことがあるのか

ここが、この言葉の核心だと思う。

今はスマートフォンがある。

地震が起きると、多くの人がすぐ画面を見る。

「震源はどこ?」

「震度はいくつ?」

「津波は?」

もちろん情報確認は大切だ。

しかし、津波の危険がある場所では、
情報が出るまでその場で待つこと自体が危険になる場合がある。

気象庁も、震源が陸地に近い場合には、
津波警報・注意報の発表が
津波の襲来に間に合わないことがあるとしている。

だから、

「警報が出たら逃げよう」

だけではなく、

「強い揺れ、または弱くても長い揺れを感じたら、
自分で津波の可能性を考えて行動する」

ことが大切になる。

内閣府の津波避難対策の検討資料でも、
静岡県の「地震だ、津波だ、すぐ避難」という標語について、
地震の揺れを感じた人が津波を意識し、
自ら高台へ逃げることを後押しするための言葉として説明されている。


「構えていないで避難する」という理解は近い

では、

「地震がきたら、構えていないで避難するということでしょうか?」

という疑問に戻ろう。

津波リスクのある場所という前提なら、考え方としてはかなり近い。

ただ、より正確に表現するなら、

揺れている最中は身を守る。
津波の危険を感じる揺れなら、
収まった後にその場で様子を見続けず、
速やかに安全な場所へ避難する。

という意味で理解するといい。

「津波が本当に来るのかな?」

「テレビを見てからにしよう」

「近所の人が逃げ始めたら行こう」

「海を見に行って確認しよう」

こうして判断を先送りしない。

特に海の様子を確認しに行くのは避けるべき行動だ。

津波が来るかどうかを、自分の目で海を見て確認する必要はない。


「すぐ避難」が必要になる3つのサイン

津波から身を守る行動を、分かりやすく整理してみよう。

① 海辺で強い揺れを感じた

強い地震を感じたら、津波の発生を考える。

揺れが収まったら、津波の危険がある場所では速やかに安全な高台などへ避難する。

② 弱くても長い揺れを感じた

「そんなに強くなかったから大丈夫」

とは限らない。

気象庁は、弱くても長くゆっくりした揺れを感じた場合にも、
海辺から離れてより高い安全な場所へ避難するよう呼びかけている。

③ 津波警報などを見聞きした

ここも重要だ。

自分のいる場所で揺れを感じていなくても、
遠くで発生した地震によって津波が来ることがある。

したがって、

「揺れていないから津波は来ない」

とも限らない。

津波警報等を見聞きした場合は、
その地域で求められる避難行動を取る。

遠地地震など、
日本で揺れを感じなくても津波が到達するケースがある。


「少しでも早く、少しでも高く」

静岡県が現在掲げている言葉には続きがある。

「地震だ、津波だ、すぐ避難! 少しでも早く、少しでも高く」

だ。

津波避難では、

早く逃げること

と、

より安全な場所を目指すこと

の両方が重要になる。

気象庁も、津波は沿岸の地形などによって局所的に
予想より高くなる場合があるため、
「ここなら安心」と決めつけず、
より高い場所を目指すよう呼びかけている。

ただし、だからといって


津波避難ビル


津波避難タワー

などが整備されている。

だから平常時に、
自分の地域では「どこへ逃げるのか」を確認しておく必要がある。


津波避難で大切なのは「その場で避難先を考えない」こと

災害が発生してから、

「どこへ行けばいい?」

とスマートフォンで検索していると、それだけ避難開始が遅れる。

だから津波対策は、地震が起きる前から始まっている。

自宅。

勤務先。

学校。

よく利用する海岸。

釣り場。

旅行先。

それぞれについて、

ここで地震が起きたら、どちらへ逃げるか?

を一度考えてみよう。

気象庁も、住んでいる市町村の津波ハザードマップなどで、
浸水想定区域や避難場所を平常時に確認するよう案内している。

国土地理院「ハザードマップポータルサイト」


避難したあと、すぐ家へ戻ってはいけない

「津波が来なかったみたいだから帰ろう」

これも危険な判断になり得る。

津波は一度だけ来るとは限らない。

繰り返し押し寄せ、
後から来る津波のほうが高くなる場合もある。

気象庁は、津波警報等が解除されるまで避難を続け、
津波警報が出ている間は戻らないよう呼びかけている。

つまり「すぐ避難!」には、
もう一つセットで覚えておきたい言葉がある。

「勝手にすぐ戻らない」

だ。

避難する判断と、戻る判断は別に考えよう。


「津波てんでんこ」と共通する考え方

この言葉を見ていると、防災格言シリーズ第1回で取り上げた、

「津波てんでんこ」

との共通点が見えてくる。

どちらにもあるのが、

「誰かが判断してくれるまで待たない」

という考え方だ。

家族が帰ってくるまで待つ。

近所の人が逃げるまで待つ。

警報を確認するまで待つ。

誰かが「逃げろ」と言うまで待つ。

そうではなく、平常時から家族で避難方法や集合方法を決めておき、
危険なときにはそれぞれが命を守る行動を取れるようにしておく。

「津波てんでんこ」
と
「地震だ、津波だ、すぐ避難!」
は表現こそ違うが、
避難開始をためらわないという点で重なる部分がある。


「稲むらの火」ともつながっている

第3回で紹介した「稲むらの火」にも共通点がある。

1854年の安政南海地震津波で、濱口梧陵は津波から逃げ遅れた人々を助けるため行動した。

現代には防災無線もスマートフォンも津波警報もある。

しかし、最後に命を守るのは、

情報を知ったあと、自分自身が動くこと

だ。

警報を受け取る。

ハザードマップを見る。

避難場所を知っている。

それだけでは津波から逃げたことにはならない。

知識を避難行動に変える。

そこまでできて初めて防災になる。


「此処より下に家を建てるな」との違いも面白い

第2回の、

「此処より下に家を建てるな」

は、災害が起きる前の教訓だった。

危険な土地を知る。

過去の災害を知る。

そして住む場所を考える。

一方、

「地震だ、津波だ、すぐ避難!」

は、地震が発生したその瞬間からの行動を教えている。

シリーズを並べると、

「此処より下に家を建てるな」
→ 災害前に考える

「地震だ、津波だ、すぐ避難!」
→ 災害発生時に動く

という違いが見えてくる。

防災は災害が発生した瞬間だけのものではない。

災害前の備えと、災害発生時の行動がつながっている。


防災ラボる流「知備即行」で考える

「地震だ、津波だ、すぐ避難!」は、防災ラボるが大切にしている、

知備即行(ちびそっこう)

との相性が非常にいい言葉だ。

知る

自宅や職場が津波浸水想定区域なのかを知る。

津波の特徴を知る。

避難場所を知る。

備える

避難経路を確認する。

実際に歩いてみる。

夜間でも避難できるか確認する。

家族が離れている場合の行動を決めておく。

即行

地震発生。

まず身を守る。

津波の危険を示す揺れを感じたら、

迷わず避難行動へ移る。

まさに、

知る → 備える → すぐ行動する。

である。


今日できる「知備即行」

この記事を読んで、

「なるほど」

で終わらせない。

津波浸水の可能性がある地域に住んでいるなら、
今日一つだけ確認してみよう。

「自宅から一番近い津波避難場所はどこか?」

できれば地図を見るだけでなく、実際に歩いてみる。

昼間なら簡単に歩ける道でも、

夜なら?

停電していたら?

道路が塞がれていたら?

子どもや高齢者と一緒なら?

雨が降っていたら?

状況によって避難の難しさは変わる。

災害時に初めて避難経路を歩くのではなく、
平常時に一度歩いておく。

これも立派な防災だ。


まとめ|「すぐ避難」とは、考えないことではなく「事前に考えてあるから動ける」ということ

「地震だ、津波だ、すぐ避難!」

この言葉を、

「地震が起きたら、とにかく慌てて外へ飛び出す」

という意味で理解してはいけない。

まず地震の揺れから自分の身を守る。

そして津波の危険がある場所で、
強い揺れや弱くても長い揺れを感じたら、
津波警報の発表を待つことだけに頼らず、
速やかに安全な場所へ避難する。

「本当に来るのかな」

「もう少し様子を見よう」

「みんなが逃げてからでいいか」

そんな迷いによって、
避難開始を遅らせないための言葉だと考えると分かりやすい。

そして、すぐ避難できる人は、何も考えていない人ではない。

むしろ、

■どこが危険か知っている。

■どこへ逃げるか決めている。


■どう逃げるか準備している。

だから災害が起きたときに動ける。

知っているから、備えられる。
備えているから、すぐ動ける。

「地震だ、津波だ、すぐ避難!」

この短い言葉には、
防災ラボるの「知備即行」
そのものにつながる教訓が込められている。

タイトルとURLをコピーしました