「備えた今日が、未来を変える。」
災害は、いつ起きるか分からない。
地震かもしれない。
台風かもしれない。
大雨による洪水や土砂災害かもしれない。
だからこそ、
防災では「災害が起きたときにどうするか」だけではなく、
「何も起きていない今日、何をしておくか」
が重要になる。
水を買っておく。
家具を固定する。
ハザードマップを見る。
家族で避難場所を決める。
スマートフォンを充電する。
非常用トイレを準備する。
一つひとつは、とても小さな行動だ。
しかし、その小さな備えが、
災害が発生した未来の自分や家族を助けるかもしれない。
そこで防災ラボるの「防災格言」第5回では、
これまでの災害伝承から少し視点を変え、
「備えた今日が、未来を変える」
という言葉を、防災ラボるのオリジナル防災格言として考えてみたい。
※この言葉は歴史的な災害伝承や特定人物の発言ではなく、
「知備即行」の考え方を表現した防災ラボる独自の言葉だ。
防災は「未来のために今できること」
防災という言葉を聞くと、
「防災リュックを買わなければ」
「大量の水や食料を準備しなければ」
「家を災害に強くしなければ」
と、大がかりな準備を想像する人もいるかもしれない。
その結果、
「時間があるときにやろう」
となってしまう。
しかし、防災は一日ですべて完成させる必要はない。
むしろ大切なのは、
今日、一つでも備えを増やすこと。
内閣府も、災害に備えて家具の固定、
食料・飲料などの備蓄、避難場所・避難経路の確認、
家族との安否確認方法などを平常時から準備するよう案内している。
防災は、災害が起きてから始めるものではない。
何も起きていない時間こそ、防災に使える大切な時間なのだ。
なぜ「今日」なのか?
「防災用品は今度買おう」
「ハザードマップは暇なときに見よう」
「家具の固定はそのうちやろう」
そう思っていても、災害はこちらの予定に合わせてはくれない。
だから、
「いつか備える」ではなく「今日、一つ備える」
という考え方が大切になる。
例えば今日、家族で避難場所を確認したとする。
何も起こらなければ、
「確認して終わっただけ」
に見える。
しかし翌日に大きな災害が発生したら、その確認が、
「どこへ逃げればいい?」
と迷う時間を減らすかもしれない。
今日買った非常用トイレも同じだ。
今日固定した家具も同じ。
今日確認したハザードマップも同じ。
平常時には小さく見える行動が、
災害時には大きな意味を持つ可能性がある。
それが、
「備えた今日が、未来を変える」
という言葉に込めた意味だ。
① 今日、水と食料を確認する
まず始めやすいのが、水と食料だ。
災害によって電気・ガス・水道などのライフラインが止まったり、
物流が滞ったりする可能性がある。
内閣府は家庭での備蓄について、
飲料水を1人1日3リットルを目安に3日分、
食料についても最低3日分、
できれば1週間分程度を備える考え方を案内している。
だからといって、今日すべてを買いそろえなくてもいい。
スーパーへ行ったとき、
水を少し多めに買う。
レトルト食品を一つ増やす。
缶詰を数個買う。
普段食べるものを少し多めにストックする。
そして使った分を買い足していく。
こうしたローリングストックなら、
特別な非常食だけを大量に保管するより生活に取り入れやすい。
農林水産省も、普段の食品を少し多めに買い置きし、
食べた分を補充する方法を紹介している。
今日の買い物を、少しだけ未来のための買い物に変える。
これも防災だ。
② 今日、非常用トイレを確認する
水や食料と並んで忘れたくないのが、
トイレだ。
大きな地震などでは、
断水だけでなく排水設備が損傷する可能性もある。
「水が残っているから流せる」
と自己判断するのではなく、
集合住宅なら管理側からの案内なども確認する必要がある。
災害時のトイレ問題は、我慢すれば済む問題でもない。
内閣府のガイドラインでも、
トイレを我慢するために水分や食事を控えることで
健康への影響につながる可能性が指摘されている。
だから今日、
「家に携帯トイレ・簡易トイレはいくつある?」
と確認してみよう。
食料だけでなく、
食べる備えと、出す備え。
両方を考えておきたい。
③ 今日、家具を一つ固定する
大地震で怖いのは、建物そのものの被害だけではない。
家の中にも危険はある。
例えば、
本棚。
食器棚。
タンス。
テレビ。
冷蔵庫。
大きな揺れによって家具類が転倒・移動すると、
けがにつながるだけでなく、避難経路をふさぐ可能性もある。
東京消防庁は、
近年発生した地震で負傷者の一定割合が
家具類の転倒・落下・移動によってけがをしているとして、
家具類の転倒・落下・移動防止対策を呼びかけている。
全部を一日で対策するのが難しければ、
今日は寝室の家具だけ。
それでもいい。
特に寝ている場所の周囲は、
「倒れてくる家具はないか」
「頭の上に重い物はないか」
「出口を家具がふさがないか」
を確認してみよう。
一つ固定すれば、一つ危険を減らせる。
④ 今日、ハザードマップを開く
防災用品を買う前に、ぜひやってほしいことがある。
それが、
「自分の住んでいる場所では、何が起こり得るのかを知ること」
だ。
洪水。
土砂災害。
高潮。
津波。
地域によって想定される災害は違う。
国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」では、
各種災害リスク情報や市町村のハザードマップを確認できる。
ただし、ハザードマップは、
「色が付いていないから絶対安全」
という地図ではない。
想定を超える災害などもあり得るため、
リスクを理解するための重要な資料として活用しよう。
防災ラボるでは、
ハザードマップについて詳しく解説した記事も公開している。
ここから、
を見てみよう。
⑤ 今日、避難場所まで歩いてみる
地図で避難場所を確認した。
それだけでも一歩前進だ。
でも、できればもう一歩進めたい。
実際に歩いてみる。
地図では近く見えても、
急な坂がある。
狭い道がある。
ブロック塀が続いている。
川を渡る必要がある。
夜になると真っ暗になる。
といったことに気づくかもしれない。
災害時には普段と同じ条件で移動できるとは限らない。
だから、
第一候補だけでなく、別の避難経路も考えておく。
これも今日できる防災だ。
⑥ 今日、家族と一つだけ決める
災害は、家族全員が自宅にいるときに起こるとは限らない。
父親は会社。
母親は買い物。
子どもは学校。
そんな時間に大地震が発生する可能性もある。
そこで家族で、
「災害が起きたら、どうする?」
を話しておこう。
すべてを一度に決めなくてもいい。
今日は、
「避難した場合の集合場所」
だけ決める。
次は、
「連絡が取れない場合の方法」
を決める。
内閣府も、災害時には携帯電話がつながりにくくなる場合を想定し、
家族で安否確認の方法や集合場所などを
事前に話し合っておくよう案内している。
家族会議も防災用品の一つ。
物ではないけれど、大切な備えだ。
「備えれば絶対助かる」という意味ではない
ここは、この格言を伝えるうえで大切にしたい。
「備えた今日が未来を変える」
とは、
「備えていれば、どんな災害でも絶対に大丈夫」
という意味ではない。
自然災害には、人間の想定を超えることがある。
どれだけ準備していても被害を完全に防げない場合もある。
だから防災は、
絶対安全をつくるものではなく、危険を減らし、選択肢を増やすもの
と考えたい。
水があれば、断水時の選択肢が増える。
非常用トイレがあれば、トイレが使えないときの選択肢が増える。
ハザードマップを見ていれば、避難判断の材料が増える。
避難経路を知っていれば、迷う時間を減らせる。
家具を固定していれば、室内の危険を減らせる。
つまり、
備えとは「未来を完全に予測すること」ではなく、
「未来に起こり得る困難へ対応できる可能性を高めること」なのだ。
過去の「防災格言」と並べると見えてくるもの
防災ラボるでは、これまで災害から生まれた言葉や教訓を取り上げてきた。
第1回は、
「津波てんでんこ」
津波が来たら、誰かの判断を待つのではなく、
それぞれが命を守るため避難する。
そのためには、平常時から
家族で避難について話し合っておくことが重要だ。
第2回は、
過去の津波被害を忘れず、土地の危険を次の世代へ伝える言葉だった。
第3回は、
「稲むらの火」
1854年の安政南海地震津波にまつわる濱口梧陵の行動から、
危険を察知し、避難し、その後の災害にも備えることを考えた。
第4回は、
津波の危険がある場所では、
強い揺れや長い揺れを感じたとき、まず身を守り、
その後の避難開始をためらわないことを考えた。
そして第5回、
「備えた今日が、未来を変える」
は、それらの教訓を、
「では、何も起きていない今日、自分は何をするのか?」
につなげる言葉だ。
防災ラボるの「知備即行」とは
防災ラボるが大切にしている考え方が、
知備即行(ちびそっこう)
だ。
知る。
備える。
すぐ行動する。
まず災害について知る。
自分の住んでいる土地の危険を知る。
そして必要なものを備える。
避難方法を決める。
最後に、
知っただけ、
準備しようと思っただけで終わらせず、
実際に行動する。
今回の格言、
「備えた今日が、未来を変える」
は、この「知備即行」の「備」と「行」を特に表した言葉でもある。
今日から始める「1日1防災」
そこで防災ラボるから、一つ提案したい。
それが、
「1日1防災」
だ。
毎日、大がかりな防災訓練をする必要はない。
今日は水を一本多く買う。
明日は非常用トイレを確認する。
次の日はモバイルバッテリーを充電する。
週末はハザードマップを見る。
家族がそろった日に避難場所について話す。
そんな小さなことでいい。
0から1にする。
それを繰り返す。
すると半年後には、
「何もしていなかった家」
から、
「少しずつ災害に備えている家」
へ変わっている。
これこそ、
備えた今日が未来を変える
ということではないだろうか。
今日の「知備即行」
この記事を読み終わったら、一つだけ行動してみよう。
おすすめは、
「自宅にある飲料水の本数を数える」
こと。
足りなければ、次の買い物で少し追加する。
すでに十分なら、
非常用トイレ。
懐中電灯。
モバイルバッテリー。
家具固定。
ハザードマップ。
避難場所。
別の備えを一つ確認する。
重要なのは、
「防災しなければ」と思うだけで終わらせないこと。
5分でもいい。
一つでもいい。
今日、実際に動く。
まとめ|未来の自分を助けられるのは「今日の自分」かもしれない
災害が発生した未来から、今を振り返ることはできない。
でも想像することはできる。
もし明日、大地震が起きたら。
もし来週、大雨で断水したら。
もし台風で長時間停電したら。
そのとき未来の自分は、
「あのとき準備しておいてよかった」
と思うだろうか。
それとも、
「あのときやっておけばよかった」
と思うだろうか。
未来を完全に予測することはできない。
災害そのものを止めることもできない。
しかし、
今日の行動を変えることはできる。
水を備える。
食料を備える。
トイレを備える。
家具を固定する。
ハザードマップを見る。
避難場所を確認する。
家族と話す。
その一つひとつが、未来の選択肢を増やしていく。
だから、防災ラボる第5の防災格言は、
「備えた今日が、未来を変える。」
小さな備えの積み重ねが、大切な人の未来を守るかもしれない。
知る。備える。すぐ行動する。
今日から一つ。
知備即行。

