在宅避難で水・電気・ガスが止まったら?ライフライン停止を乗り越える知恵と備え

ライフラインが止まったら 災害のその後
ライフラインが止まったら

大きな地震や台風、豪雨が過ぎ去っても、
すぐに元の生活へ戻れるとは限りません。

自宅が倒壊を免れて在宅避難を始めても、
水道・電気・ガスが同時に止まる可能性があります。

  • 水が飲めない
  • トイレを流せない
  • 食事を作れない
  • 冷蔵庫が使えない
  • スマートフォンを充電できない
  • お風呂に入れない
  • 暑さや寒さをしのげない

避難所へ行かず自宅で生活できることにはメリットがありますが、
ライフラインが止まった家は
「いつもの自宅」とはまったく違う場所になります。

今回は「防災ラボる」のステップ4「災害のその後」として、
水・ガス・電気が止まったときの乗り越え方を、
ラボ」る君と一緒に考えます。

在宅避難は「自宅が安全な場合」だけ

「らぼる君、自宅が残っていれば避難所へ行かなくてもいいんだよね?」

防災すぐるパパが尋ねました。

「その前に、自宅で生活を続けられる状態か確認しよう。建物や周辺に危険があるなら、ライフラインの備蓄があっても自宅に残ってはいけないよ」

らぼる君が答えます。

在宅避難を始める前の安全確認

次のような危険がある場合は、
自宅にとどまらず安全な避難所などへ移動してください。

  • 建物が傾いたり、大きな亀裂が入ったりしている
  • 柱、梁、屋根などが損傷している
  • 津波、洪水、土砂災害の危険が残っている
  • 周辺で火災が発生している
  • ガス臭や焦げた臭いがする
  • 電気配線や分電盤が水にぬれている
  • 上下水道の破損や逆流が起きている
  • 余震で倒壊する恐れがある
  • 家族の体調を維持できない

自宅の安全性を自分だけで判断できない場合は、
自治体や応急危険度判定の情報を確認しましょう。

在宅避難を選んだ場合も、
自治体や最寄りの避難所へ「自宅に避難していること」を登録します。

登録しておくことで、
給水、食料、生活用品、健康相談などの支援情報を
受け取りやすくなります。

ライフラインが止まったら最初にすること

地震や水害の直後は、使える設備を探す前に、
二次災害を防ぐ必要があります。

最初の確認手順

  1. 家族のけがと体調を確認する
  2. 建物と周囲の安全を確認する
  3. 火災、ガス漏れ、漏電の兆候を調べる
  4. 水道・ガス・電気が使えるか確認する
  5. 自治体や事業者の復旧情報を確認する
  6. 飲料水、食料、電池などの在庫を数える
  7. 家族で使用量と役割を決める

「ある物を何となく使う」のではなく、
最初に在庫を書き出すのがポイントです。

品目在庫1日の使用予定使用可能日数
飲料水36L12L3日
携帯トイレ80回分20回4日
カセットボンベ6本使用時間で管理要計算
モバイルバッテリー4台1~2台2~4日
保存食36食12食3日

家族の人数や年齢、季節、病気の有無によって必要量は変わります。
乳幼児、妊婦、高齢者、療養中の人がいる家庭は、
余裕を持った備蓄が必要です。

水道が止まったときの乗り越え方

「水なら、給水所へ取りに行けば大丈夫じゃない?」

まどかママが言いました。

「給水所がすぐに開くとは限らないし、
長い列ができることもあるよ。

それに、水は重いんだ。
家族4人分の飲料水だけでも、1日12リットルになるんだよ」

政府は飲料水を1人1日3リットルとし、
最低3日分、できれば1週間分以上を備えるよう案内しています。
水を用途別に分けて考える

災害時の水は、大きく三つに分けて管理します。

水の種類主な用途使用上の注意
飲料用飲み水、服薬清潔な保存水を優先する
調理用湯せん、汁物、乳児用ミルク飲用可能な水を使う
生活用水手洗い、清掃、洗濯飲み水とは容器を分ける

用途の分からない水、浸水した井戸水、濁った水、雨水を、
そのまま飲んではいけません。

家庭用浄水器は、すべての細菌、ウイルス、化学物質、塩分などを
除去できるとは限りません。

「浄水器を通せば、どのような水でも飲める」と考えないことが大切です。

最初は飲料水を守る

断水が始まったら、保存水を次の順番で使います。

  1. 服薬と水分補給
  2. 乳幼児や高齢者の飲料
  3. 加熱しない食事
  4. 調理
  5. 歯磨きなどの衛生

食器洗いや清掃へ飲料水を大量に使わないよう、
ラップ、紙皿、ポリ袋などを活用します。

水を節約する知恵

  • 紙皿にラップを敷いて使う
  • コップや箸を家族ごとに固定する
  • 汚れの少ない食器から拭く
  • 食器洗いにはウェットティッシュを利用する
  • 無洗米や湯せん食品を選ぶ
  • 麺のゆで汁を大量に必要とする料理を避ける
  • 汁ごと食べられる料理にする
  • 体は大判の体拭きシートで清潔にする
  • ドライシャンプーを利用する
  • 歯磨きシートや液体歯磨きを併用する

ただし、節水を優先するあまり、
飲む水まで減らしてはいけません。

脱水、熱中症、便秘、血栓症などの原因になります。

水道が止まったらトイレを流さない

断水時に特に困るのがトイレです。

「お風呂の残り湯を使えば、トイレを流せるんじゃない?」

防災すぐるパパが聞きました。

「配管や下水道が壊れていたら、流した水が逆流したり、
 下の階へ漏れたりするかもしれないよ。
 安全が確認されるまでは携帯トイレを使おう」

断水直後のトイレ対策

  1. 便器のふたを閉める
  2. 配管や下水道の安全情報を確認する
  3. 便座へ大きなごみ袋をかぶせる
  4. その上に携帯トイレ用の袋を取り付ける
  5. 用を足したら凝固剤を入れる
  6. 袋の空気を抜いて口をしっかり結ぶ
  7. 防臭袋やふた付き容器へ一時保管する
  8. 自治体が指定する方法で処分する

便器が壊れている場合は、丈夫なバケツや災害用トイレを使います。

携帯トイレは何回分必要?

排泄回数には個人差がありますが、
1人1日5~7回程度を想定すると、
4人家族では1日に20~28回分が必要です。

家族人数3日分の目安7日分の目安
1人15~21回分35~49回分
2人30~42回分70~98回分
4人60~84回分140~196回分

最低限の数だけでなく、
下痢、体調不良、来客なども考えて余裕を持たせましょう。

内閣府も、飲料水とともに簡易トイレを重要な家庭備蓄として挙げています。

給水所へ行くための準備

水は1リットルで約1キログラムあります。
20リットルのポリタンクを満水にすると、
容器を含めて20キログラムを超えます。

給水所へ行くときは、次の物が役立ちます。

  • 5~10リットル程度の給水袋
  • 小分けできるペットボトル
  • 折り畳み式ポリタンク
  • 背負えるリュック
  • キャリーカート
  • 軍手
  • タオル
  • 自治体の給水情報を確認できるスマートフォンやラジオ

一度に大量の水を運ぼうとせず、無理なく持てる容器へ分けます。

水道水をくみ置きするとき

平常時に水道水をくみ置きする場合は、
清潔でふたのできる容器へ、
蛇口から直接、口元まで入れます。

東京都水道局では、
浄水器を通したり沸かしたりすると消毒用の塩素が減るため、
保存用には蛇口から直接くむよう案内しています。

直射日光を避けた常温では約3日、
冷蔵庫では約10日が一つの目安です。

期限を過ぎた水は、清掃などの生活用水へ回せます。

ガスが止まったときの乗り越え方

ガスが止まると、調理、給湯、暖房などが制限されます。

しかし、慌ててガスメーターを復帰させるのは危険です。

最初にガス漏れや機器の損傷がないか確認します。

ガス臭いときにしてはいけないこと

ガス臭を感じた場合は、次の操作をしてはいけません。

  • 火をつける
  • 電灯や換気扇のスイッチに触る
  • コンセントを抜き差しする
  • ガスメーターを復帰させる
  • ガス機器を試運転する

可能であればガス栓とメーターガス栓を閉め、
窓や戸を開けます。
その場を離れてからガス事業者へ連絡してください。

ガス臭いときは、自分で復帰操作をしてはいけません。
ガス臭がある場合は復帰させず、
事業者へ連絡するよう示されています。

ガスの代わりになる物

目的代用品
調理カセットこんろ、加熱不要食品
お湯カセットこんろ、電気ケトル、保温ボトル
暖房毛布、寝袋、湯たんぽ、重ね着
入浴体拭きシート、ドライシャンプー
食品加熱湯せん対応袋、レトルト食品

電気が使える場合は、
IH調理器、電気ケトル、電子レンジなども利用できます。

ただし、ポータブル電源で使用する場合は、
機器の消費電力が出力上限を超えていないか確認します。

カセットこんろを安全に使う

カセットこんろは便利ですが、
使い方を誤ると火災、爆発、一酸化炭素中毒を起こす恐れがあります。

  • 使用中は必ず換気する
  • テントや車内では使わない
  • カーテンや家具など燃えやすい物から離す
  • 2台を並べて使用しない
  • こんろを覆うような大きな鉄板や鍋を使わない
  • ボンベを火や暖房器具の近くへ置かない
  • ボンベを温めない
  • 機器に適合するボンベを使用する
  • 使用後はボンベを取り外す
  • 古いこんろやさびたボンベを使用しない

日本ガス石油機器工業会は、
カセットこんろの周辺を可燃物から離すことや、
テント・車内で使用しないことなどを呼びかけています。

カセットボンベは何本必要?

必要な本数は、火力、気温、調理時間、
使用する器具によって異なります。

「1本で何日」と決めつけず、
こんろの取扱説明書に記載された連続燃焼時間から計算しましょう。

例えば、1本の連続燃焼時間が約60分の機種で、
1日に合計30分使用するなら、
計算上は2日で1本です。

ただし、
寒い時期や強火での使用では消費が早くなることがあります。

家族4人で1週間を想定するなら、
加熱不要食品も組み合わせ、

少なくとも6~12本程度を一つの検討目安とし、
家庭の調理実験で必要量を確かめてください。

ボンベは直射日光や高温を避け、
40℃未満の涼しい場所に保管します。

電気が止まったときの乗り越え方

停電すると、照明や家電だけでなく、
次の物も使えなくなる可能性があります。

  • スマートフォンの充電
  • インターネット回線
  • 冷蔵庫
  • 給湯器
  • 電動シャッター
  • オートロック
  • マンションの給水ポンプ
  • 医療機器
  • エアコンや電気暖房
  • 固定電話

マンションでは水道管が無事でも、
給水ポンプの停止によって蛇口から水が出なくなることがあります。

電気は優先順位を決めて使う

限られた電力は、次の順番を基本に考えます。

  1. 人工呼吸器など生命に関わる医療機器
  2. スマートフォンやラジオなどの情報・連絡手段
  3. LED照明
  4. 季節に応じた扇風機や電気毛布
  5. 調理家電
  6. 娯楽機器

医療機器を使用している家庭は、
必要な電源容量や停電時の対応を、
平常時に医療機関や機器事業者へ確認しておきましょう。

停電時に役立つ電源

電源向いている用途注意点
乾電池ラジオ、懐中電灯使用期限と液漏れを点検
モバイルバッテリースマートフォン定期的に充電状態を確認
ポータブル電源照明、扇風機、電気毛布、小型家電定格出力と容量を確認
ソーラーパネル日中の補充電天候や設置条件に左右される
車のUSB電源スマートフォン車庫など閉鎖空間でエンジンをかけない
携帯発電機屋外での電源確保屋内、車内、テント内は絶対禁止

ポータブル電源の容量を考える

ポータブル電源は「Wh(ワットアワー)」で容量を確認します。

必要電力量の目安は、次の計算で求められます。

消費電力(W)×使用時間(時間)=必要電力量(Wh)

例えば、20Wの扇風機を5時間使う場合は100Whです。

ただし、変換ロスがあるため、
計算どおりの全容量を使えるとは限りません。

容量の目安主な用途
200~300Whスマートフォン、ラジオ、LED照明
500~700Wh上記に加えて扇風機、電気毛布、小型家電
1,000Wh前後家族の通信、照明、季節家電、短時間の調理
1,500Wh以上家族が多い家庭、消費電力の大きい機器

購入時は容量だけでなく、
定格出力、瞬間最大出力、充電時間、重量、安全規格、
メーカーの保証体制も確認してください。

強い衝撃を受けた、水にぬれた、膨らんだ、
異臭や異常な発熱があるポータブル電源は
使用・充電してはいけません。

携帯発電機は屋内で使わない

ガソリンなどを燃料とする携帯発電機は、
屋内、車内、テント内、物置、車庫では絶対に使用しないでください。

排気ガスに含まれる一酸化炭素は、
無色・無臭で、短時間でも重大な中毒を起こす恐れがあります。

屋外でも、排気が窓や出入口から室内へ入らない、
風通しの良い場所で使用します。

NITEも、携帯発電機を屋内で使用しないことや、
窓・出入口から離して運転することを注意喚起しています。

冷蔵庫の食品は食べる順番を決める

停電したら、
冷蔵庫や冷凍庫の扉を何度も開けないようにします。
中の温度をできるだけ保ち、食べる順番を決めましょう。

  1. 傷みやすい冷蔵食品
  2. 解凍が始まった冷凍食品
  3. 常温保存できる食品
  4. 缶詰、乾物、長期保存食

見た目や臭いに異常がある食品、
長時間ぬるい状態だった肉・魚・乳製品などは、
無理に食べないでください。

災害時の食中毒は、
医療機関へ行きにくい状況では大きな負担になります。

保冷剤や凍らせたペットボトルを普段から冷凍庫に入れておくと、
停電時の保冷に役立ちます。

停電復旧時の「通電火災」に注意する

「電気が戻ったら、すぐに全部の家電を使っていいの?」

まどかママが尋ねました。

「水にぬれたり倒れたりした家電へ電気が流れると、
 火災が起きる可能性があるよ。
 復旧したときこそ慎重に確認しよう」

停電したときの対応

  • 電気ストーブ、アイロン、ドライヤーなどのプラグを抜く
  • 倒れた家電の電源を切る
  • 水にぬれた家電をコンセントから外す
  • 避難して家を離れる場合はブレーカーを切る
  • 配線の断線や焦げた臭いを確認する

電気が復旧したときの手順

  1. 家電のスイッチが切れているか確認する
  2. 電源コードやプラグの損傷を確認する
  3. 水にぬれた製品を接続しない
  4. ブレーカーを一つずつ戻す
  5. 異音、煙、異臭、発熱がないか確認する
  6. 異常があれば直ちに電源を切る

水没した家電や強い衝撃を受けた製品は、
見た目に異常がなくても使用せず、
メーカーや電気工事業者へ点検を依頼します。

停電復旧後には、
倒れた電熱器具や損傷した製品から通電火災が起きる危険があります。

ライフライン停止を乗り越える一週間分の備蓄

政府は最低3日分、
できれば1週間分以上の家庭備蓄を呼びかけています。
大規模災害では道路や物流の復旧に時間がかかる可能性があるためです。

家族4人を想定した備蓄例

分類備えておきたい物
飲料水1日12L×7日=84Lを目標
食料4人×3食×7日=84食を基本に調整
トイレ140~196回分程度を検討
調理カセットこんろ、ボンベ、着火器具
衛生体拭き、消毒液、マスク、歯磨き用品
明かりLEDランタン、ヘッドライト、乾電池
電源モバイルバッテリー、ポータブル電源
情報防災ラジオ、スマートフォン、紙の連絡先
運搬給水袋、リュック、キャリーカート
温度対策毛布、寝袋、保冷剤、扇子、カイロ
安全消火器、火災警報器、軍手、笛
健康常用薬、お薬手帳、体温計

一度にすべてを購入する必要はありません。

水、食品、電池、衛生用品などを普段から少し多めに買い、
使った分だけ補充するローリングストックなら、
期限切れと負担を減らせます。

らぼる君が考えた「ライフライン停止時の三つのルール」

1.命に必要な物から守る

水、薬、体温管理、連絡手段を優先します。

洗濯や娯楽などは後回しにします。

2.代用品を一つに頼らない

  • 飲料水と給水袋
  • カセットこんろと加熱不要食品
  • モバイルバッテリーと乾電池式ラジオ
  • ポータブル電源とソーラーパネル
  • 携帯トイレと簡易便器

このように、二つ以上の方法を用意します。

3.使い方を平常時に試す

防災用品は、持っているだけでは役立ちません。

  • 携帯トイレを一度組み立てる
  • 給水袋へ水を入れて運ぶ
  • カセットこんろで防災食を作る
  • ポータブル電源で家電を動かす
  • ブレーカーとガスメーターの場所を確認する
  • 家族全員でLEDランタンを使ってみる

月に一度、
一食だけ電気・ガス・水道をできるだけ使わない
「おうち防災訓練」をすると、
足りない物や危険な使い方に気づけます。

まとめ|在宅避難は「備蓄」と「安全な使い方」がセット

「自宅にいられるなら安心だと思っていたけれど、
水も電気もガスもない生活は大変だね」

防災すぐるパパが言いました。

「だから、物を買うだけではなく、
 止まったときの順番を決めておくことが大事なのね」

まどかママも納得したようです。

ラボる君が最後にまとめました。

「飲料水を守る、
 トイレをすぐに切り替える、
 火とガスを安全に扱う、
 電気を大切な用途から使う。
この四つを家族で練習しておけば、
ライフラインが止まっても慌てにくくなるよ」

在宅避難で大切なのは、我慢だけで乗り越えようとしないことです。


自宅が危険になった、
飲料水が尽きそう、
暑さや寒さに耐えられない、
医療機器の電源を確保できない、
家族の体調が悪化した

――そのような場合は在宅避難にこだわらず、
 自治体や避難所へ支援を求めてください。

災害後の暮らしを支えるのは、十分な備蓄、安全な知識、地域との情報のつながりです。

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