また、遠い国で起きた土砂災害のニュースを見たとき、
私たちはつい「山の多いネパールだから起きた」と考えてしまいます。
けれど、ネパールと日本には、
山が多い、
雨季がある、
山あいを道路が通り、
その近くで人が暮らしているという共通点があります。
以前も、ネパールでは2024年9月に記録的な大雨により、
洪水や土砂崩れが各地で発生しました。
ネパール政府の状況報告では、
洪水・土砂災害による死者は最終的に250人に達しました。
単に「雨がたくさん降ったから」では説明できないほど、
大きな被害でした。
今年の被害はそれを上回っています。
今回は、ラボる君と一緒に、ネパールで何が起き、
なぜ多くの命が失われたのか、
そして同じことが日本でも起こり得るのかを考えてみましょう。
ネパールで起きたのは「雨・山・暮らし」が重なった災害
防災すぐるパパ
「ネパールの土砂災害は、ヒマラヤのような高い山で起きたの?」
ラボる君
「山岳地帯だけの話ではないんだ。
首都カトマンズ周辺でも、洪水と土砂崩れが同時に起きたんだよ」
2024年9月26日から28日にかけて、
ネパールは季節外れともいえるほど
激しいモンスーン末期の雨に見舞われました。
国際山岳総合開発センター(ICIMOD)によると、
カトマンズでは24時間に200ミリを超え、
場所によっては380ミリを超える雨が観測されました。
雨で山の土が水を含んで崩れ、谷や川へ流れ込みます。
同時に川が増水し、低い土地や市街地も浸水しました。
WHOは、この災害が21地区に広がり、
道路の寸断や50を超える保健医療施設の被害を招いたと報告しています。
つまり、一つの斜面が崩れただけではありません。
山が崩れる、道路がふさがる、川があふれる、救助が届かない。
いくつもの災害が鎖のようにつながったことが、
被害を大きくしました。
「土砂崩れ」と「土石流」は何が違う?
ニュースでは似た言葉として扱われますが、
動き方には違いがあります。
土砂崩れ(がけ崩れ)
雨や地震によって斜面が不安定になり、
土や岩が突然崩れ落ちる現象です。
発生から家に届くまでの時間が短く、
逃げる時間がほとんどない場合があります。
土石流
山や谷にたまった土砂や石が、大量の水と混ざり、
谷筋を一気に流れ下る現象です。
大きな岩や流木を巻き込み、
家や車を押し流す力があります。
まどかママ
「山のすぐ下でなければ安心なの?」
ラボる君
「そうとは限らないよ。
土石流は谷の出口まで流れてくるから、
斜面から少し離れていても、谷筋や扇状地では注意が必要なんだ」
ネパールの災害でも、斜面そのものだけでなく、
山あいの道路、谷沿いの集落、川に近い市街地が被害を受けました。
なぜ多くの犠牲者が出たのか
理由1|短時間に記録的な雨が降った
土の中には、雨を一時的に蓄えられる限界があります。
長雨の後に強い雨が重なると、
斜面はスポンジのように水を含み、
土を支える力が弱くなります。
2024年9月のネパールでは、
強い雨が広い範囲で長く続きました。
川の氾濫と斜面崩壊がほぼ同時に起きたため、
安全な方向へ移動すること自体が難しくなりました。
ただし、「温暖化だけがこの災害を起こした」と
単純に言い切ることはできません。
気候変動は極端な雨を強める要因の一つですが、
実際の被害は地形、土地利用、建物、道路、避難体制などが
重なって決まります。
理由2|若く急な山と崩れやすい斜面
ネパールの山地は急斜面が多く、地質も複雑です。
そこへ地震や風化、道路工事などの影響が加わると、
斜面が不安定になる場所があります。
山を削って造られた道路では、
上側の切り立った斜面と、
谷側に盛られた土の両方に注意が必要です。
排水が十分でなければ、雨水が斜面へ入り込みやすくなります。
もちろん、
すべての道路工事が災害の原因というわけではありません。
しかし、雨の量だけでなく、
どこをどう削り、雨水をどこへ逃がすかが安全を左右します。
理由3|危険な道路上に人と車が取り残された
この災害を象徴するのが、
カトマンズ西方のジャプレ・コラで起きた土砂崩れです。
夜間、道路上にいたバスなどが土砂に巻き込まれ、
35人が亡くなりました。
発生直後にネパールの災害情報システムへ登録された暫定集計では、
9月26~28日に143件の土砂災害が記録され、
156人が死亡したと報告されています。
豪雨の中で道路が渋滞・通行止めになると、
車内は安全な避難場所ではなくなります。
前へも後ろへも動けず、
斜面の下で雨を待つことになれば、
危険は急激に高まります。
防災すぐるパパ
「車なら、雨をしのげるから安心だと思っていたよ」
ラボる君
「大雨の山道では、車がかえって逃げ場を失うこともあるんだ。
通行止めになってからではなく、
危険になる前に移動をやめる判断が大切だね」
理由4|川沿いの都市化と排水不足
カトマンズ盆地では人口と建物が増え、
川沿いや低い土地にも市街地が広がってきました。
ICIMODは、無計画な市街化、氾濫原への建設、河川への接近、
雨水を一時的に受け止める土地の不足、
排水設備の弱さが被害を拡大させたと指摘しています。
舗装や建物が増えると、
雨水は地面へ染み込みにくくなり、
短時間で川や低地へ集まります。
山から流れてきた土砂が水路を詰まらせれば、
浸水はさらに悪化します。
理由5|道路寸断で救助が遅れた
山国では、
一本の道路が集落と都市を結ぶ命綱になっていることがあります。
その道路が複数箇所で崩れると、
消防、救急、重機、医薬品が被災地へ入れません。
2024年のネパールでは多くの主要道路が寸断され、
首都へ通じる交通も大きな影響を受けました。
被災した場所の危険だけでなく、
「助けに行けない」という二次的な困難が犠牲を増やしたのです。
日本でも同じことは起こり得る?
結論から言えば、起こり得ます。
日本も国土の多くを山地が占め、
住宅、道路、鉄道が斜面や谷、川の近くに集まっています。
梅雨前線、台風、線状降水帯によって、
同じ地域へ雨が降り続くこともあります。
違いは、
日本には砂防施設、斜面対策、雨量観測、
土砂災害警戒情報などの仕組みが広く整備されていることです。
しかし、対策施設があっても、
想定を超える雨や、対策されていない小さな沢、
複数箇所の同時発生を完全に防ぐことはできません。
ネパールと日本で共通する危険の重なり方は、次のように整理できます。
| 危険が重なる場面 | ネパールで見られたこと | 日本で考えられること |
|---|---|---|
| 長雨の後の豪雨 | 斜面崩壊と洪水が同時発生 | 梅雨末期・台風・線状降水帯 |
| 山あいの道路 | 車やバスが土砂に巻き込まれる | 国道・県道・生活道路の孤立 |
| 谷や川沿いの居住 | 土砂と洪水が市街地へ集中 | 谷底平野、扇状地、造成地 |
| 排水能力の不足 | 都市浸水を拡大 | 内水氾濫、水路の閉塞 |
| 救助経路の寸断 | 首都・集落への交通が途絶 | 中山間地域や半島部の孤立 |
大きな違いがあるから安心なのではなく、
似た条件が自宅や移動経路にないかを見ることが重要です。
日本で私たちが確認したい5つのこと
1.自宅だけでなく「道」の危険を見る
ハザードマップで自宅が区域外でも、
避難所までの道や通勤路が土砂災害警戒区域を通る場合があります。
山側に急斜面、谷側に川がある道路、沢を横切る場所、
過去に落石や通行止めがあった場所を確認しましょう。
2.小さな沢や谷筋を軽く見ない
普段は水が流れていない溝のような谷でも、
大雨時には土石流の通り道になることがあります。
地図上の「土砂災害警戒区域」だけでなく、
国土地理院の重ねるハザードマップや自治体の防災マップを見比べます。
3.雨が激しくなってから車で逃げない
土砂災害は発生してから逃げ切ることが難しい災害です。
大雨の夜に山道を走ると、
冠水、倒木、落石、土砂崩れで進退を断たれることがあります。
高齢者や乳幼児がいる家庭、
避難に時間がかかる人は、
警戒レベル3「高齢者等避難」を一つの目安に早めに動きます。
対象者以外も危険を感じたら自主的に避難して構いません。
警戒レベル4「避難指示」までに危険な場所から全員避難することが基本です。
4.土砂キキクルを早めに見る
気象庁の「土砂キキクル」は、
土砂災害の危険度がどこで高まっているかを地図上で確認できる情報です。
大雨警報や土砂災害警戒情報が出てから初めて開くのではなく、
雨が強くなる前に見方を確認しておきましょう。
ただし、画面の色が変わるまで待つのは危険です。
自治体の避難情報、
周囲の状況、家族の避難時間と組み合わせて判断します。
5.前兆を見たら確認に行かない
■がけから小石が落ちる、
■湧き水が濁る、
■地面や壁に亀裂が入る、
■川の水が急に濁る、
■山鳴りがする
などは、土砂災害の前兆とされます。
しかし、前兆がないまま突然発生することもあります。
異変を確かめるために斜面や川へ近づかず、
すぐに安全な場所へ離れてください。
「海外の大災害」から持ち帰るべき教訓
まどかママ
「ネパールと日本は違うけれど、
災害が大きくなる流れは似ているのね」
ラボる君
「そうだね。雨の強さだけではなく、
危険な場所に人や車がいること、道路が一本しかないこと、
夜で移動が難しいことが重なると被害が大きくなるんだ」
ネパールの災害から見えてくるのは、自然現象の大きさだけではありません。
災害は、
強い雨 × 崩れやすい地形 × 人のいる場所 × 逃げにくい時間と道路
が重なったとき、深刻になります。
私たちに雨を止めることはできません。
しかし、危険な場所を知り、
雨が強くなる前に移動し、山道へ入らない判断はできます。
「まだ大丈夫だろう」と待つのではなく、
「何も起きていないうちに動く」。
それが、遠いネパールの悲劇を日本の備えへ変える方法です。
まとめ|土砂災害は、発生前の判断が命を守る
2024年9月のネパールでは、記録的な豪雨、
急な地形、山あいの道路、川沿いの都市化、
排水や交通網の弱点が重なり、多くの犠牲者が出ました。
日本には観測や防災設備がありますが、
山が多く、豪雨が続き、
斜面や谷の近くで暮らすという条件は共通しています。
「ネパールだから起きた災害」ではありません。
今日のうちに、
自宅、避難先、そこまでの道を
ハザードマップで確認してみてください。
そして大雨が予想される日は、
暗くなる前、道路が止まる前に動く準備を始めましょう。
ラボる君
「土砂災害は、
見てから逃げるのでは間に合わないことがあるよ。
家族で”どの雨なら、いつ、どこへ逃げるか”を決めておこう!

