土砂災害警戒区域に住んでいる人へ|「まだ大丈夫」と思わず転居・避難を今から考えよう

台風25号による土砂災害を背景に、ハザードマップの確認・避難計画・転居を呼びかける防災ラボるのアイキャッチ画像 土砂災害
土砂災害に備える家族の防災マップ

2026年9月、台風25号による記録的な大雨で、
各地で冠水や土砂災害が発生しました。

伊豆大島では24時間降水量が686.5mmに達し、
関東各地でも記録的な大雨となりました。

雨のピークを越えた後も地盤が緩み、
土砂災害への警戒が必要な状態が続きました。

そして今回、土砂崩れによる人的被害も報告されています。

被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

今回「防災ラボる」で考えたいのは、

「自分の家は大丈夫だろうか?」

ということです。

特に、自宅がハザードマップで土砂災害警戒区域などに入っている人、
あるいは近所に
「土砂災害警戒区域」
などの看板が設置されている地域に暮らしている人には、
一度真剣に考えてほしい問題です。


「何十年も住んでいるけれど、一度も崩れていない」は安全の証明ではない

「ここに30年住んでいるけれど、土砂崩れなんて起きたことがない」

「大雨は何度も経験したけれど大丈夫だった」

「今回もたぶん大丈夫」

そう考えてしまう気持ちは分かります。

しかし、

「今まで起きなかった」
と
「これからも起きない」

は同じではありません。

土砂災害警戒区域等は、
土砂災害によって生命や身体に
危害が生じるおそれがある区域として指定されるものです。

気象庁も、急傾斜地や渓流付近など危険性が認められる場所について、
ハザードマップなどで自宅が土砂災害警戒区域等に該当するかを
平常時から確認するよう呼びかけています。

つまり、

ハザードマップの色は「今日災害が起こる」という予報ではありません。

しかし同時に、

「何も起きていないから、
この土地には危険がない」という意味でもありません。

ここを間違えないことが重要です。


「まだ大丈夫」と考えている間に、逃げる条件が悪くなる

土砂災害で特に怖いのは、危険になってから避難しようとすると、
避難そのものが難しくなる可能性があることです。

外は猛烈な雨。

道路には水が流れている。

夜で周囲が見えない。

停電している。

道路が通行止めになっている。

高齢の家族がいる。

そして、斜面の状態がすでに危険になっている。

この状態になってから、

「やっぱり逃げよう」

では遅くなる可能性があります。

だからこそ防災では、
災害が起きてからの行動だけではなく、
何も起きていないときの判断が重要になります。

気象庁も、土砂災害警戒区域等の住民について早めの避難を呼びかけ、
「土砂キキクル」で危険度を確認するよう案内しています。

2026年度からの表示では、
高齢者等は遅くとも
「警戒(赤)」、
一般の人は
遅くとも「危険(紫)」
が現れた段階で危険な場所から避難することが重要とされています。

気象庁「土砂キキクル」について


防災ラボるが考える「3段階の土砂災害対策」

土砂災害警戒区域等に住んでいる場合、
「避難袋を準備したから終わり」ではありません。

私は対策を次の3段階に分けて考えることをおすすめします。

第1段階:災害が起きたとき逃げる

避難場所、避難経路、家族との連絡方法を決めておく。

第2段階:災害が起きる前に逃げる

天気予報・自治体の避難情報・土砂キキクルなどを確認し、
「この状態になったら避難する」という基準を家族で決めておく。

第3段階:危険な場所に住み続けること自体を考える

ここまで考えることが、今回の記事で最も伝えたいことです。


「避難する」だけではなく「転居する」という防災もある

毎年、大雨や台風のたびに、

「今回は大丈夫だろうか」

と心配しなければならない。

大雨になるたびに避難する。

夜中でも避難しなければならない可能性がある。

高齢になれば避難そのものが難しくなる。

それなら一度、

「ここに住み続けることが最善なのだろうか?」

と考えてみてもいいと思います。

もちろん、転居は簡単な話ではありません。

住宅ローンがあります。

仕事があります。

学校があります。

親の介護があります。

土地への愛着があります。

先祖から受け継いだ家というケースもあるでしょう。

費用の問題もあります。

だから、

「土砂災害警戒区域だから今すぐ引っ越しましょう」

という単純な話ではありません。

しかし、

「転居も防災対策の一つとして検討する」

ことはできます。


転居を「災害が来てから考えること」にしない

ここが非常に重要です。

災害によって住宅が被害を受けてから、

「これからどこに住もう」

と考えるのと、

平常時に家族で、

■「5年後には安全性の高い場所へ移ろう」

■「子どもの進学に合わせて住み替えよう」

■「住宅ローンの状況を確認してみよう」

■「高齢になる前に駅や病院にも近い場所へ移ろう」

と計画するのでは、まったく違います。

転居するかどうかを今日決める必要はありません。

「転居できる可能性を調べ始める」こと自体が防災です。


土地を探すときにもハザードマップを見る

そして転居を考えるなら、
次の住宅では同じ問題を繰り返さないことが大切です。

□家賃や住宅価格だけで決めない。

□駅からの距離だけで決めない。

□間取りだけで決めない。

□学校やスーパーだけで決めない。

候補地が見つかったら、

契約する前にハザード情報を確認する。

土砂災害だけではありません。

洪水、内水氾濫、高潮、津波など、
その地域で想定される災害を確認します。

そして可能なら現地へ行き、

□「家の後ろに急な斜面はないか」

□「近くに谷や崖はないか」


□「避難するとしたらどちらへ逃げるのか」


□「夜間や大雨でも避難できる道路なのか」

まで考えます。

これが「防災ラボる」で以前からお伝えしている、

家を選ぶ前に土地の災害リスクを見る

という考え方です。


ハザードマップだけ見て終わらせない

自宅の場所を一度確認しただけで安心するのではなく、
雨が強くなったらリアルタイム情報も確認してください。

気象庁の「土砂キキクル」は、
大雨による土砂災害発生の危険度を地図上で5段階に表示し、
10分ごとに更新しています。

つまり、

平常時 → ハザードマップ

大雨時 → 避難情報+気象情報+土砂キキクル

という使い分けです。

そして自治体から避難指示が出た場合は、
キキクルの色にかかわらず
速やかに避難行動を取るよう気象庁は案内しています。


「今まで大丈夫だった」は、これからの安全を保証してくれない

今回の台風25号による被害を、

「大変だったね」

だけで終わらせないでほしいと思います。

■自宅の近くに土砂災害警戒区域の看板がある。

■ハザードマップを見ると自宅に色が付いている。

■家の裏に急傾斜地がある。

■大雨になるたびに自治体から避難情報が出る。

そういう人は、一度家族で話し合ってください。

「大雨になったらどこへ逃げる?」

だけではありません。

「これから10年、20年、この場所に住み続ける?」

という話までしてほしいのです。


高齢になってからでは、住み替えも避難も難しくなるかもしれない

□今は自分で車を運転できる。

□階段も歩ける。

□荷物も運べる。

□避難所まで自力で移動できる。

しかし10年後、20年後も同じとは限りません。

だから住まいの防災は、

「今の自分」だけでなく「将来の自分」まで考える必要があります。

子どもが独立したとき。

定年を迎えたとき。

住宅ローンを払い終えたとき。

家を大規模リフォームするとき。

相続を考えるとき。

こうしたタイミングは、
住み続けるか、住み替えるかを考える機会にもできます。


防災とは「逃げる準備」だけではない

防災というと、

水を備蓄する。

非常食を買う。

防災バッグを作る。

避難所を確認する。

こうした準備を思い浮かべます。

もちろん、すべて大切です。

しかし、その一歩前があります。

「そもそも災害リスクの高い場所から
 離れることはできないだろうか?」

という発想です。

避難は、災害が迫ったとき命を守る対策。

転居・住み替えは、
長期的に災害リスクとの距離を取るための選択肢です。

どちらか一方ではありません。

今すぐ転居できないなら、まず避難計画を強化する。

将来的に転居できる可能性があるなら、その準備も始める。

家庭によって答えは違います。


今日、家族でやってほしいこと

まず自宅をハザードマップで確認してください。

土砂災害警戒区域等に該当するなら、
避難場所と避難経路を確認する。

家族の中で最も避難に時間がかかる人を基準に考える。

大雨になったときに見る情報を決める。

そして最後に、

「この家にこれからも住み続けるのか」
まで話してみてください。

転居しないという結論になっても構いません。

重要なのは、

危険性を知らずに住み続けることと、
危険性を理解して対策をしたうえで暮らすことは違う

ということです。


防災ラボるから伝えたいこと

災害は、

「いつか来るかもしれない」

と思っている間は、なかなか行動できません。

しかし、土砂災害警戒区域等に住んでいるのであれば、
ハザード情報は「怖がらせるための地図」ではありません。

命を守るために、今のうちに考える材料です。

「まだ大丈夫」
ではなく、

「何も起きていない今だから考えられる」

に変えてみてください。

□避難場所を決める。

□避難経路を歩いてみる。

□家族と話し合う。

そして必要なら、

転居・住み替えも選択肢に入れる。

防災は災害が起きてから始めるものではありません。

あなたと大切な家族の命を守るために、平常時の今から始めるものです。

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