大きな地震では、建物が無事でも、
家具や家電が倒れたり動いたりして
ケガをすることがあります。
倒れた家具が出入口をふさぐと、
避難が遅れる原因にもなります。
けれども、
「家具を固定したほうがいいのは分かるけれど、
何をどこに取り付ければいいの?」
「賃貸住宅だから壁に穴を開けられない」
と迷う家庭も多いのではないでしょうか。
この記事では、家具・机・テレビ・冷蔵庫・電子レンジなどを
地震に備えて固定する方法を、ラボる君と一緒に学びます。
※固定器具は、家具・家電の種類、重量、壁や天井の材質に適合する製品を選び、取扱説明書どおりに設置してください。重量物や壁下地が分からない場合は、施工業者、工務店、電器店などの専門家へ相談しましょう。どの方法でも転倒を完全に防げるとは限りません。
地震では家具や家電が「倒れる・落ちる・動く」
防災すぐるパパ:
「家具は重いから、少しくらい揺れても大丈夫だと思っていたよ。」
ラボる君:
「重い家具ほど、倒れたり移動したりしたときの危険が大きいんだ。
固定していない家具は、強い揺れで転倒するだけでなく、
床を滑って移動することもあるよ。」
まどかママ:
「食器棚から食器が飛び出したり、
テレビが落ちたりすることも考えないといけないのね。」
ラボる君:
「そうだね。
家具本体の転倒防止だけでなく、
扉が開くこと、収納物が飛び出すこと、
ガラスが割れることまでまとめて対策しよう。」
地震による室内の危険は、大きく次の4つに分けられます。
- タンスや本棚などが倒れる
- テレビや電子レンジなどが落下・移動する
- 食器や本、置物などが飛び出す
- 倒れた家具や散乱物が避難経路をふさぐ
固定器具を買う前に、
まず
「倒れてきても人に当たらない配置」
と
「出口をふさがない配置」
をつくることが重要です。
最初に家具の配置を見直そう
寝室や子ども部屋には背の高い家具を置かない
人が眠っているときは、緊急地震速報や最初の揺れに気づいても、
すぐに動けないことがあります。
ベッドや布団に向かって倒れる位置に、
タンス、本棚、鏡、テレビを置かないようにしましょう。
可能であれば、
寝室や子ども部屋には背の高い家具を置かず、
低い収納や備え付け収納を利用します。
移動できない場合は、家具の向きを変え、
倒れても寝ている場所を直撃しない配置にしてください。
出入口・廊下・階段をふさがない
家具が倒れてドアが開かなくなれば、
安全な部屋から出られません。
玄関までの通路や廊下、階段の近くには、
背の高い家具やキャスター付き家具を
置かないことが基本です。
ドアの近くに家具を置く場合は、
転倒したときの範囲を床に想定し、
ドアの開閉方向と重ならないか確認しましょう。
重いものは下、軽いものは上へ収納する
家具の上部に重い物を詰め込むと、重心が高くなり倒れやすくなります。
水、書類、家電、重い鍋などは下段へ移し、
上段には軽い衣類や日用品を収納します。
家具の天板の上には、
ガラス製品、花瓶、水槽、重い置物を置かないようにしましょう。
家具を固定する器具の種類と選び方
L型金具で壁下地へ固定する
壁にねじ止めできる持ち家などでは、
L型金具やベルト式器具を使い、
家具と壁の下地を固定する方法が基本です。
ここで大切なのは、
ねじを「壁紙の奥の石こうボードだけ」に留めないことです。
柱、間柱、胴縁など、
ねじを十分に保持できる下地へ固定する必要があります。
下地の位置が分からない場合は、
下地センサーを使用するか、専門家へ相談してください。
取り付けるときは、次の点を確認します。
- 家具の丈夫な部分と壁下地を固定する
- 金具は家具の左右にバランスよく設置する
- 家具と壁の隙間をできるだけ小さくする
- ねじの種類と長さを壁・家具の材質に合わせる
- 巾木が家具の背面に当たる場合は無理に押し込まない
壁内には電線や配管が通っている場合があります。
長いねじをむやみに打ち込むのは危険です。
不明な場所への施工は避けましょう。
ポール式器具は家具の奥側へ垂直に設置する
ポール式器具、いわゆる家具用の突っ張り棒は、
家具の天板と天井の間に設置します。
家具の前側ではなく、壁に近い奥側へ、
左右に分けて垂直に取り付けます。
天井に十分な強度がないと、揺れで天井材を突き破るおそれがあります。
天井側の下地位置を確認し、
必要に応じて当て板で力を分散させます。
なお、ポール式だけで対策を終わらせず、
家具の前下部に入れるストッパー式器具や粘着マット式器具と
組み合わせると効果を高められます。
ストッパー式器具で家具を壁側へ傾ける
ストッパー式器具は、家具の前側の下へ差し込み、家具をわずかに壁側へ傾ける器具です。床と家具の形状に合ったものを選びます。
単独で使うより、
家具上部のポール式器具と組み合わせるのが基本です。
設置後は家具がぐらつかないか、
引き出しや扉を安全に開閉できるか確認してください。
粘着マット式は小型家電や置物の移動防止に使う
粘着マット式器具は、
テレビや小型家電などの底面と台を密着させるために使用します。
接着面のほこりや油分を落とし、
対象物の重量に対応した製品を選びましょう。
大型家具の転倒対策を粘着マットだけで済ませるのではなく、
対象物に応じてベルト式などと組み合わせます。
劣化や剥がれがないか定期的に確認することも必要です。
ベルト式・チェーン式で家具や家電をつなぐ
テレビ、冷蔵庫、家具などの背面と、
壁下地や専用固定部をベルト・チェーンでつなぐ方法です。
揺れを受け流せるよう、
対象製品が指定する位置と角度で取り付けます。
家電本体の通風口をふさいだり、
電源コードへ負担をかけたりしないよう注意してください。
家具別の固定方法
タンス・本棚・食器棚
背の高い家具は、
L型金具やベルト式器具で壁下地へ固定します。
壁へのねじ止めが難しい場合は、
ポール式とストッパー式などを組み合わせます。
上下に分かれた家具は、
上段と下段も連結金具で固定してください。
引き出しが飛び出すと重心が前へ移るため、
引き出し用ロックも検討します。
本棚では重い本を下段へ入れ、
棚板ごとに落下防止バーやベルトを付けます。
食器棚は、家具本体の固定に加えて次の対策も必要です。
- 開き戸に扉開放防止器具を付ける
- ガラス面に飛散防止フィルムを貼る
- 棚板に滑り止めシートを敷く
- 重い食器を下段へ移す
- 食器を高く積み上げない
机・学習机
机は背の高い家具ほど転倒しやすくありませんが、
上置き棚、引き出し、キャスター、
デスクトップパソコンに注意が必要です。
- 上置き棚を机本体と連結し、可能なら壁にも固定する
- 引き出しが飛び出さないようロックする
- キャスター付き机はロックを掛け、
必要に応じて移動防止器具を使う - モニターを専用ベルトや固定具で机へ固定する
- パソコン本体を床へ直置きせず、落下しにくい位置へ置く
机の下は、揺れが収まるまで身体を守る場所になることがあります。荷物を詰め込みすぎず、潜り込める空間を確保しておきましょう。
テーブル・椅子
丈夫なテーブルは、
地震時に頭を守るための場所になります。
脚の緩みや天板の割れがないか日頃から点検しましょう。
キャスター付きの椅子やワゴンは
大きく移動することがあります。
普段からキャスターをロックし、
避難通路には置かないようにします。
家電別の固定方法
テレビ
テレビは、
画面サイズが大きくなるほど転倒・落下時の危険が増します。
テレビ台とテレビ本体を耐震ベルトで固定し、
テレビ台も壁や床へ固定します。
粘着マットを併用する場合は、
テレビの重量、脚の形状、
設置面の材質に対応しているか確認してください。
テレビ台の上に置くだけでなく、壁掛けにする場合も、
壁下地と金具の耐荷重を確認して専門業者へ依頼すると安心です。
冷蔵庫
冷蔵庫は背が高く重量もあるため、
転倒すると大変危険です。
背面上部の固定用部分と壁下地を、
メーカーが指定する転倒防止ベルトなどで固定します。
放熱に必要な隙間、扉の開閉、コ
ンセントへのアクセスを妨げないようにしてください。
冷蔵庫の上には電子レンジや重い物を安易に置かず、
設置する場合は専用ラックとそれぞれの固定方法を確認します。
電子レンジ・炊飯器・電気ケトル
電子レンジは重いため、落下すると大きなケガにつながります。
耐震マット、ストッパー、ベルトなど、
メーカーや固定器具が認める方法で台へ固定し、
台そのものも固定します。
炊飯器や電気ケトルは、
使用時の蒸気や熱がこもらない位置へ置き、滑り止めを使用します。
電源コードを固定ベルト代わりにしたり、
延長コードへ無理な力をかけたりしてはいけません。
洗濯機
洗濯機は地震だけでなく、運転時にも振動します。
水平で丈夫な床へ設置し、
防振・移動防止器具は洗濯機に適合するものを使用します。
給水・排水ホースに無理な力がかからないよう、
壁との隙間も確認してください。
設置に不安がある場合は、販売店や専門業者へ依頼しましょう。
照明・額縁・時計
吊り下げ照明はチェーンやワイヤーで補強し、
額縁や時計は落下防止フックなどで固定します。
ベッド、ソファ、子どもの遊び場の真上には、
重い物やガラス製品を飾らないことが最も安全です。
賃貸住宅で壁に穴を開けられない場合
まどかママ:
「賃貸だと、勝手にねじを打つのは難しいわね。」
ラボる君:
「まず管理会社や大家さんへ相談しよう。
命を守るための固定でも、
契約によって原状回復の扱いが違うから、
許可を取っておくと安心だよ。」
壁への固定が認められない場合は、次の対策を組み合わせます。
- 背の高い家具を寝室や避難経路から移動する
- 低い家具へ買い替える
- ポール式とストッパー式・粘着マット式を組み合わせる
- 家具の天井側にすき間収納を入れ、動きにくくする
- 家具同士を連結する
- テレビや小型家電を台とベルトでつなぐ
- 扉ロック、落下防止バー、飛散防止フィルムを追加する
穴を開けない器具も、壁紙、塗装面、床材を傷める場合があります。
使用できる材質と剥がし方を確認してください。
やってはいけない固定方法
石こうボードだけへねじを留める
下地のない石こうボードへ直接ねじを打っても、
強い力で抜ける可能性があります。
専用アンカーを使えるケースもありますが、
対象物の重量や壁の構造によって適否が変わります。
重量家具は自己判断せず、下地固定を基本にしてください。
突っ張り棒を家具の手前へ付ける
ポール式器具は壁に近い奥側へ取り付けます。
斜めになっていたり、家具の弱い天板へ設置したりすると、
十分な力を発揮できない可能性があります。
家具の上に段ボールを詰めるだけ
段ボールや雑誌を家具と天井の隙間へ無理に詰めても、
専用器具と同じ性能があるとは限りません。
落下や火災の原因にもなるため、
用途に適した固定器具を使いましょう。
一度設置したら点検しない
ねじの緩み、ベルトの劣化、粘着材の剥がれ、
突っ張り棒のずれは少しずつ進みます。
大掃除、防災の日、家具の移動後など、
時期を決めて点検しましょう。
家族でできる部屋別チェックリスト
寝室・子ども部屋
- ベッドや布団へ倒れる家具がない
- 頭の上に重い物やガラス製品がない
- ドアまでの通路が確保されている
- タンス・本棚・テレビを固定した
- 懐中電灯と履物を手の届く位置に置いた
リビング・ダイニング
- テレビとテレビ台をそれぞれ固定した
- 食器棚の扉に開放防止器具を付けた
- ガラスに飛散防止フィルムを貼った
- キャスター付き家具をロックした
- 出入口へ倒れる家具がない
キッチン・洗面所
- 冷蔵庫をメーカー指定の方法で固定した
- 電子レンジと設置台を固定した
- 吊り戸棚の扉にロックを付けた
- 重い鍋や食器を下段へ移した
- 洗濯機の水平、ホース、移動防止を確認した
固定した後に家族で確認すること
家具を固定したら、
それで防災が終わるわけではありません。
家族全員で、地震が起きたときの動きを確認しておきましょう。
- 揺れている間は無理に家具を支えない
- 頭を守り、丈夫な机の下など安全な場所へ移る
- 揺れが収まってから火元と出口を確認する
- 割れたガラスに備えて靴やスリッパを履く
- 家族の安否と避難情報を確認する
防災すぐるパパ:
「固定した家具を、
揺れている最中に押さえに行ってはいけないんだね。」
ラボる君:
「そうだよ。
家具の固定は、
逃げる時間と安全な空間をつくるための備え。
強い揺れの最中は、まず自分の頭と身体を守ろう。」
まとめ|固定する前に「配置」、固定した後は「点検」
家具・机・家電の地震対策は、
次の順番で進めると分かりやすくなります。
- 寝る場所、よく過ごす場所、避難経路から危険な家具を移す
- 重い物を下段へ移し、家具の重心を低くする
- 壁下地へL型金具やベルト式器具で固定する
- 壁固定が難しければ、ポール式とストッパー式などを組み合わせる
- 扉、引き出し、収納物、ガラスにも対策する
- 定期的に緩みや劣化を点検する
全部屋を一度に対策するのが難しければ、
まず寝室、子ども部屋、リビング、避難経路から始めてください。
今日、家具の向きを変えるだけでも危険を減らせます。
まどかママ:
「固定器具を買う前に、どこへ倒れるかを考えるのが大切なのね。」
ラボる君:
「うん。家族が長くいる場所と逃げ道から優先して、
一つずつ安全な部屋に変えていこう!」

