中古住宅は、新築より価格を抑えられたり、
実際の建物や周辺環境を見てから選べたりする魅力があります。
しかし、間取りや内装、駅からの距離だけで決めてしまうと、
購入後に
「大雨で道路が冠水する」
「裏山に土砂災害の危険がある」
「耐震改修に大きな費用がかかる」
と分かることがあります。
中古住宅の防災で大切なのは、
災害リスクがまったくない家を探すことではありません。
その土地と建物にどのような危険があり、
避難や補修にどれだけ備えられるかを、
契約前に知ることです。
今回は「防災ラボる」のラボる君が、
中古住宅の購入を考えている防災すぐるパパとまどかママと一緒に、
購入前の確認ポイントを調べました。
※本記事は一般的な防災情報です。
個別物件の安全性や契約条件は、
自治体、不動産会社、建築士、宅地建物取引士、
土地家屋調査士、保険会社などへ確認してください。
中古住宅は「建物・土地・避難」の3方向から確認しよう
防災すぐるパパ:
「中古住宅なら実物を見られるから、
新築より安心して選べるのかな?」
ラボる君:
「実物を確認できるのは大きな利点だよ。
でも、晴れた昼間の内覧だけでは分からない危険もあるんだ。
建物だけでなく、
土地の災害リスクと避難のしやすさも確認しよう」
購入前に調べたい項目は、大きく3つに分けられます。
- 土地と周辺地域:洪水、内水氾濫、土砂災害、津波、高潮、地震、液状化など
- 住宅そのもの:耐震性、基礎、屋根、外壁、雨漏り、擁壁、設備など
- 災害後の生活:避難経路、指定緊急避難場所、停電・断水、保険、修繕費など
どれか一つだけで判断せず、三つを重ねて考えることが重要です。
まず住所をハザードマップで調べる
国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、
住所から周辺の災害リスクを調べられます。
「重ねるハザードマップ」と、
各自治体の地図を探せる
「わがまちハザードマップ」
の両方を確認しましょう。
洪水・内水氾濫
川から離れていても、
短時間の豪雨で下水道や水路の排水が追いつかず、
道路や宅地に水がたまる内水氾濫が起こることがあります。
確認したいのは次の点です。
- 想定浸水深と浸水継続時間
- 河川との距離、高低差(海抜)
- 周囲より低い土地や窪地ではないか
- 地下室、半地下、掘り込み式駐車場がないか
- 避難経路に川、用水路、アンダーパスがないか
- 自治体が把握している過去の浸水履歴
水害ハザードマップ上の物件所在地は
不動産取引の重要事項説明の対象ですが、
説明されるまで待たず、
購入検討の段階で確認しましょう。
地図の想定区域外でも災害が起きないとは限りません。
土砂災害・崖・擁壁
山や崖に近い物件では、
土砂災害警戒区域などの指定を確認します。
区域外でも、
敷地の裏に急斜面がある、
古い擁壁がある、
水抜き穴が詰まっている、
擁壁が膨らんだり傾いたりしている場合は
専門家へ相談してください。
まどかママ:
「きれいな眺めの高台でも、斜面や擁壁の確認が必要なのね」
ラボる君:
「そうだね。
高台だから洪水に強いとは限らないし、
反対側に土砂災害の危険があるかもしれない。
災害は一種類ずつではなく、重ねて見ることが大切だよ」
津波・高潮
海岸や河口付近では、津波と高潮の両方を確認します。
- 想定される浸水区域と深さ
- 津波到達までの時間
- 徒歩で逃げられる高台や津波避難ビル
- 夜間や停電時にも歩ける経路か
- 家族全員が無理なく避難できる距離か
「2階へ上がれば大丈夫」と自己判断せず、
自治体の避難方針と避難先を確認しましょう。
地震・液状化・土地の成り立ち
地震の揺れやすさ、液状化の可能性、造成地かどうかも確認します。
昔の河川、沼、水田、谷を埋めた土地、盛土造成地などは、
現在の見た目だけでは土地の成り立ちが分からないことがあります。
自治体の地震防災マップ、液状化マップ、
大規模盛土造成地マップ、
古い地形図などを併せて確認すると判断材料が増えます。
ただし、地図だけで個別敷地の安全性を断定することはできません。
気になる場合は地盤や擁壁の専門調査を検討しましょう。
現地は晴れた昼間以外にも見に行く
雨の日と雨上がりを確認する
可能であれば、
大雨の最中に危険な場所へ近づくのではなく、
安全を確保したうえで通常の雨の日や雨上がりにも周辺を確認します。
- 道路や側溝に水がたまりやすくないか
- 敷地へ道路の水が流れ込まないか
- 庭に長く水が残らないか
- 擁壁の水抜き穴から適切に排水されているか
- 地下、床下、収納に湿気やカビ臭がないか
外壁や基礎に不自然な変色、
玄関や物置に同じ高さの水跡がある場合は、
過去の浸水について売主や仲介会社へ質問しましょう。
夜間の避難経路を歩く
夜は街灯の数、道幅、階段、側溝、
ブロック塀などの見え方が変わります。
最寄りの避難先まで、
次の条件を想定して歩いてみましょう。
- 停電して暗い
- 雨が降っている
- 子どもや高齢者と一緒
- 車を使えない
- 普段の道が冠水・通行止めになっている
指定緊急避難場所は災害の危険から一時的に逃れる場所、
指定避難所は自宅へ戻れない人が一定期間過ごす施設です。
災害の種類によって使える避難先が異なる場合があります。
近隣で過去の状況を聞く
自治体の防災担当部署や公開資料で、
過去の浸水、土砂災害、道路冠水、停電・断水などを確認します。
差し支えない範囲で、不動産会社や近隣住民にも次のように質問できます。
- この道路は大雨で冠水したことがありますか
- 過去に床上・床下浸水はありましたか
- 台風で停電が長引いたことがありますか
- 崖や擁壁の補修履歴はありますか
- 避難するとき、地域ではどの道を使いますか
聞いた話だけで結論を出さず、
公的記録や専門家の調査と照らし合わせましょう。
建物状況調査(インスペクション)を検討する
中古住宅は、
見た目がきれいでも構造部分や
雨水の侵入に関する不具合が隠れている場合があります。
国の制度に基づく既存住宅状況調査は、
一定の講習を修了した建築士が、
基礎や壁など構造耐力上主要な部分、
雨水の侵入を防止する部分などの状況を調べるものです。
ただし、インスペクションは
「将来の災害でも絶対安全」という保証ではありません。
調査範囲、床下・小屋裏へ入るか、
設備や擁壁、地盤を対象にするかは、
依頼前に確認してください。
契約前に見てもらいたい部分
- 基礎のひび割れ、欠損、不同沈下の兆候
- 柱や床の傾き
- 外壁、屋根、軒裏、雨どいの劣化
- 雨漏り跡、腐朽、シロアリ被害
- 床下の湿気、配管の漏水
- 窓、雨戸、シャッターの状態
- ブロック塀、門柱、カーポートの固定状態
- 擁壁の傾き、ひび割れ、排水状況
- 給湯器、分電盤、給排水設備の位置
防災すぐるパパ:
「リフォーム済みで内装がきれいなら大丈夫だと思っていたよ」
ラボる君:
「壁紙や床が新しくても、
基礎、屋根裏、床下、配管まで直しているとは限らないよ。
『どこを、いつ、誰が、どんな工事をしたか』を
記録で確認しよう」
耐震性は築年数だけで決めない
築年数は重要な手掛かりですが、
「新耐震だから絶対安全」
「古いから必ず危険」
と一律には判断できません。
建築確認日、構造、増改築、劣化、
過去の地震被害、耐震診断・
改修の有無などによって状態は変わります。
特に増築や壁の撤去、重い屋根材への変更などがある場合は、
図面や工事記録を確認し、必要に応じて耐震診断を依頼します。
売主・不動産会社へ確認する書類
- 建築確認済証、検査済証
- 設計図書、間取り図、構造に関する資料
- 耐震診断書、耐震改修の記録
- リフォーム・増改築の履歴と領収書
- 建物状況調査報告書
- 雨漏り、シロアリ、浸水、地震被害などの告知内容
- 修繕履歴、保証書、設備の取扱説明書
- 境界確認書、測量図
書類がないことだけで購入不可とは限りません。
しかし「確認できないリスク」として、
追加調査や修繕予算に反映させる必要があります。
災害後も暮らせる家かを考える
建物が倒壊しなくても、
停電・断水・道路寸断によって
生活できなくなることがあります。
ライフラインと在宅避難
次の点を確認しておくと、
購入後の備えを具体化できます。
- 給水所や応急給水拠点までの距離
- 道路が一方向しかなく孤立しやすくないか
- ガスの種類と復旧時の確認方法
- 分電盤、給湯器、コンセントが浸水想定より低い位置にないか
- 備蓄を置ける乾燥した収納場所があるか
- 家具を固定できる壁や下地があるか
- 感震ブレーカーや非常用電源を導入できるか
太陽光発電や蓄電池があっても、
停電時にどのコンセントを
どれだけ使えるかは設備によって異なります。
機器の型番、保証、停電時の使用方法を確認しましょう。
火災と延焼の危険
住宅密集地では、自宅だけでなく周辺からの延焼も考えます。
- 前面道路の幅と消防車の進入しやすさ
- 隣家との距離
- 古いブロック塀や狭い路地
- 避難経路上の倒壊・落下物
- 住宅用火災警報器の設置場所と交換時期
- 消火器を置ける場所
火災保険・地震保険は契約前に見積もる
購入後に保険料や補償条件を知るのではなく、
候補物件の段階で保険会社や代理店へ相談しましょう。
確認したいのは、
火災、風災、水災、雪災、破損などの補償範囲、
免責金額、建物と家財の補償額です。
地震、噴火、これらによる津波を原因とする損害は、
一般的な火災保険だけでは補償されないため、
地震保険の扱いも確認します。
水災補償の条件や対象外となる損害は商品ごとに異なります。ハザードマップと建物の位置を示し、個別に見積もってください。
修繕費を含めて購入予算を考える
中古住宅の購入価格が安くても、
耐震改修、屋根・外壁補修、擁壁改修、止水対策、
雨戸やシャッター、感震ブレーカーなどに
費用が必要になる場合があります。
購入判断では、次の金額を分けて考えましょう。
- 購入代金と諸費用
- 入居前に必ず行う安全工事
- 数年以内に必要な修繕
- 防災設備・備蓄品
- 災害時の当面の生活資金
見積もりは「一式」だけで判断せず、
工事範囲、材料、数量、仮設費、廃材処分費などを確認します。
自治体によっては耐震診断・改修などの補助制度がありますが、
契約や着工前の申請が必要な場合もあるため、
先に窓口へ確認してください。
「安心R住宅」も判断材料の一つ
国土交通省の「安心R住宅」は、
▢耐震性があり、
▢インスペクションが行われ、
▢リフォーム
などについて情報提供される既存住宅に付けられる標章です。
中古住宅を探すときの判断材料になります。
ただし、標章があることだけで、
あらゆる災害に対して安全という意味ではありません。
土地のハザード、避難経路、
個別の調査内容は別に確認しましょう。
契約前チェックリスト
土地・周辺環境
- 洪水、内水、土砂、津波、高潮の各ハザードマップを確認した
- 地震の揺れやすさ、液状化、盛土造成地を確認した
- 過去の浸水・土砂災害・道路冠水を自治体へ確認した
- 雨上がりの排水と敷地の高低差を確認した
- 崖、擁壁、水路、ブロック塀を確認した
建物
- 建築確認、検査、図面、修繕履歴を確認した
- 増改築や災害被害の履歴を確認した
- 契約前のインスペクションを検討した
- 基礎、屋根、外壁、床下、雨漏り跡を確認した
- 耐震診断・改修の必要性と費用を確認した
避難・生活
- 災害別の指定緊急避難場所を確認した
- 昼と夜に徒歩で避難経路を確認した
- 冠水時や通行止め時の別ルートを考えた
- 停電・断水時に在宅避難できるか検討した
- 火災保険・地震保険の見積もりを取った
- 安全工事と修繕費を購入予算に入れた
ラボる君から中古住宅を探す家族へ
まどかママ:
「内装やキッチンだけでなく、
地図、周りの道路、基礎や屋根まで見る必要があるのね」
防災すぐるパパ:
「安い物件かどうかではなく、
安全にするための費用まで含めて考えてみるよ」
ラボる君:
「中古住宅には、実際の家と地域を見て選べる良さがあるよ。
大切なのは、危険を知らずに買うことを避けること。
契約前なら、調査する、専門家に相談する、
修繕費を見積もる、
別の物件を選ぶという判断ができるんだ」
中古住宅を購入してから災害リスクに気づいても、
土地そのものを動かすことはできません。
だからこそ、購入前に、
■ハザードマップで知る
■現地を歩いて確かめる
(朝・昼・夜の時間・雨の日・晴れた日)
■専門家に建物を調べてもらう
この3段階を行いましょう。
防災は、家を買った後に始めるものではありません。
家を選ぶときから、家族を守る準備は始まっています。

