【防災格言⑥】率先避難者たれ|「誰かが逃げるまで待つ」が危険な理由

防災格言 第6回 率先避難者たれ 「誰かが逃げるまで待つ」が危険! 防災ステップ1ー知る
防災格言 第6回 率先避難者たれ 「誰かが逃げるまで待つ」が危険!

災害が起きたとき、

「まだ誰も逃げていないから大丈夫かな」

「近所の人も家にいるし……」

「避難したら大げさだと思われそう」

そんな気持ちが、避難を遅らせることがあります。

そこで今回紹介したい防災格言が、

「率先避難者たれ」

です。

意味はシンプルです。

誰かが逃げるのを待つのではなく、自分から避難を始める。

そして重要なのは、自分が最初に動くことで、周囲の人が避難を始めるきっかけにもなり得るということです。

「防災ラボる」の理念である、

知る。備える。そして、すぐ行動する。――知備即行。

にも非常につながりの深い言葉です。

今回は「率先避難者たれ」の意味や背景、
東日本大震災での釜石の避難事例、
そして私たちが日常から準備できることを考えます。


防災格言「率先避難者たれ」

今回の言葉は、

率先避難者たれ

です。

「率先」とは、人より先に行動すること。

つまり防災では、

「周りの様子を見てから」ではなく、自分から避難行動を起こす。

という意味になります。

特に津波では、避難を始めるまでの時間が重要です。

気象庁も東日本大震災の教訓を踏まえた教材で、
迅速かつ自主的な避難や「率先避難」の意識を伝えています。


「率先避難者たれ」の本当の意味

この言葉を、

「自分だけ先に逃げればいい」

と解釈してはいけません。

大切なのは、

まず自分自身が避難を始めること。

そして、その行動が結果的に周囲へ、

「逃げたほうがいいんだ」

「私たちも行こう」

という判断を促す可能性があります。

沖縄気象台も、
東日本大震災から得られた重要な教訓の一つとして
「自らの判断で、自分の命を守る行動」を挙げ、
「率先避難」の大切さを学ぶ津波避難ワークショップを実施しています。

つまり、

逃げる人から、逃げる人が生まれる。

これが「率先避難者たれ」を現代の防災として考えるうえで重要なポイントです。


この言葉と「釜石の津波防災教育」

「率先避難者たれ」は、
岩手県釜石市で行われてきた津波防災教育と深く関係しています。

当時、群馬大学の片田敏孝教授らと
釜石市の学校・教育関係者が進めた防災教育では、

①「想定にとらわれるな」

②「最善を尽くせ」

③「率先避難者たれ」

という「避難3原則」が伝えられました。

片田氏による群馬大学の報告では、
釜石で津波防災教育への取り組みを始めたのは2004年で、
2008年からは小中学校での津波防災教育が本格化しました。

安全マップ作りや登下校時を想定した避難訓練なども行われていました。

つまり、2011年3月11日に突然、

「率先して逃げよう」

と思いついたわけではありません。

その前から何度も学び、考え、訓練していた。

ここが非常に重要です。


2011年3月11日、東日本大震災

2011年3月11日。

東北地方太平洋沖地震と、それに伴う巨大津波が発生しました。

釜石市も甚大な被害を受けます。

内閣府の防災白書では、
釜石市でそれ以前から「津波てんでんこ」や
津波避難3原則を取り入れた防災教育が行われていたことを紹介しています。

そして、釜石小学校では、
地震発生時に全校児童の9割以上がすでに下校していたにもかかわらず、
児童全員が無事に避難したとされています。

一方で、「釜石の子どもは全員助かった」と単純化するのは正確ではありません。

内閣府は、学校にいなかった小中学生5人が犠牲となり、
学校事務職員1人が行方不明になったことも記録しています。

防災ラボるでは、この出来事を「奇跡だった」で終わらせるのではなく、

日頃の防災教育と訓練が、実際の避難行動につながった事例

として考えたいと思います。


「誰も逃げていない」が安全の証拠ではない

災害時に怖いのは、

周囲の人が動いていないことを「安全」と判断してしまうこと。

です。

例えば津波の危険がある地域で大きな揺れを感じても、

「近所の人が逃げていない」

「車も普通に走っている」

「海もいつもと変わらない」

という理由で避難しないのは危険です。

周囲の人も同じように、

「みんなが逃げていないから大丈夫だろう」

と考えている可能性があるからです。

だからこそ、

最初に動く人が必要になります。

その一人が「率先避難者」です。


率先避難は「空振り」を恐れない

実際には、

「避難したのに何も起きなかったら恥ずかしい」

と感じることもあるでしょう。

でも、防災では結果的に何も起きなかった避難を、

「無駄だった」

と考えないことが大切です。

危険があると判断して避難し、結果として被害がなかった。

それなら、

「今回は安全だった」

と考えればいい。

災害時に毎回完璧な未来予測をすることはできません。

だからこそ必要なのが、

「避難すべき条件を事前に決めておくこと」です。


「率先避難者たれ」だけを覚えても不十分

ここで注意したいことがあります。

「率先避難者たれ」は、

「災害が起きたら何でもいいから外へ飛び出せ」

という意味ではありません。

例えば地震なら、
激しく揺れている最中に慌てて外へ飛び出すことで、
落下物など別の危険にさらされる可能性があります。

津波の場合も、避難先や避難経路を知らなければ迷ってしまいます。

重要なのは、

災害の種類と自分のいる場所に応じて、命を守る行動を選ぶこと。

そして、そのためには災害が起きる前の準備が必要です。


「避難①原則」で考えると、もっと分かりやすい

「率先避難者たれ」だけではなく、
釜石で伝えられてきた3原則をセットで考えてみましょう。

想定にとらわれるな

ハザードマップや被害想定は非常に重要です。

しかし、

「色が付いていないから絶対安全」

という意味ではありません。

国土交通省の防災教育教材でも、
「想定を超える災害が起きるかもしれない」
と説明されています。

最善を尽くせ

「避難所に着いたから絶対大丈夫」

ではありません。

状況が変われば、
さらに安全な場所への移動が必要になることもあります。

その時点で得られる情報をもとに、

自分にできる最善の行動を続ける。

という考え方です。

率先避難者たれ

そして最後が、

「誰かが動くのを待たず、自分から命を守る行動を始める」

です。

この3つは別々ではありません。

想定だけに頼らず、状況を見て最善を尽くし、自分から行動する。

一連の考え方として覚えておきたい防災原則です。


現代の私たちが「率先避難者」になるための7つの備え

災害が発生してから、

「どこへ逃げよう?」

と考えるのでは遅くなることがあります。

だから平常時に準備します。

  1. ハザードマップを見る —
    自宅・職場・学校周辺に、
    洪水・土砂災害・津波など、どのような危険があるのか確認する。
  2. 避難場所を確認する —
    災害の種類によって適切な避難先が異なることがあるため、
    「とりあえず近所の避難所」ではなく事前に確認する。
  3. 実際に避難経路を歩く —
    坂道、狭い道路、ブロック塀、河川、夜間の暗さなど、
    地図だけでは分からない危険を確認する。
  4. 第二の避難先・経路も考える —
    最初に考えていた道が通れない場合に備えて、
    別ルートも用意する。
  5. 家族で避難ルールを決める —
    災害時に家族が別々の場所にいることも想定し、
    「家に戻って集合」だけにしない。
  6. 避難を始める条件を決める —
    自分の地域でどんな情報・状況になったら避難するのか、
    防災情報と自治体の避難情報を平時から確認する。
  7. 防災訓練に参加する —
    「知っている」と「実際に動ける」は違う。
    釜石の事例でも、平時からの訓練と教育が重要な背景にありました。

「逃げて!」と言う前に、自分が動く

家族と一緒にいるときなら、

「危ないから逃げて!」

と言うだけではなく、

「一緒に逃げよう」

と自分も動く。

近所の人に声をかけられる状況なら、

「避難しましょう」

と声をかけながら、自分も避難する。

ただし、ここでも重要なのは、

他人を助けようとして、自分まで危険な場所に戻らないこと。

です。

避難には時間的な限界があります。

まず自分自身が安全を確保する。

その行動が周囲の避難につながる。

これが「率先避難者たれ」の大切な考え方です。


防災ラボるの「知備即行」で考える

「率先避難者たれ」は、防災ラボるの理念である、

知備即行

そのものだと思います。

知る。

自分の地域にどんな災害リスクがあるのか知る。

備える。

避難場所・避難経路・家族との連絡方法を決めておく。

即行。

危険が迫ったときは、

「誰かが逃げるまで待つ」のではなく、自分から行動する。

知識だけでも足りない。

備蓄だけでも足りない。

最後に、

命を守る行動へ移せるか。

そこまで含めて防災です。


今日の「1日1防災」

今回やってほしいことは、とても簡単です。

自宅から避難場所までのルートを1本確認する。

スマートフォンやハザードマップで見るだけでも構いません。

できれば後日、実際に歩いてみてください。

「この道は夜だと暗いな」

「ここにブロック塀がある」

「川を渡らない別ルートも考えよう」

そんな発見があるかもしれません。

今日知ったことを、今日一つ行動に変える。

それが「知備即行」です。


まとめ|あなたが逃げれば、誰かも動き出すかもしれない

今回の防災格言は、

「率先避難者たれ」

でした。

誰かが逃げるまで待たない。

周囲が動いていないことを、安全の根拠にしない。

自分で状況を考え、命を守るために行動する。

そして、その行動が周囲の人の避難を促すこともあります。

釜石の津波防災教育が教えてくれるのは、
災害時だけの特別なテクニックではありません。

平時から学び、訓練し、自分で判断して行動できるようにしておくこと。

防災で大切なのは、

「そのとき考えればいい」

ではなく、

そのとき動けるように、今日から考えておくこと。

知る。備える。すぐ行動する。

防災ラボるの「知備即行」で、今日も一つ備えを増やしていきましょう。

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